信号の建設そのものについてはチュートリアルの信号の設置を参照すること。
鉄道信号は列車運行の制御するために有用な装置である。信号は列車が進攻しようとしている場所にほかの列車が入らないようにしたり、衝突を防いだりする。これらの挙動は信号の先の線路の区間の情報を取得することで実現している。信号には大きく分けて3種類がある。1つ目が閉塞信号で、単純にその区間に列車が存在する場合に他の列車の侵入を防ぐものである。2つ目がプレ信号で、閉塞信号と似ているが、その区間からの出口が必要になる。最後がパス信号で、列車が進行しようとしている経路と他の列車がお互い干渉しないかどうかを比較してくれるものである。 訳者注:以下のスクリーンショットは右側通行である。信号は進行方向に向かって右側に設置されている(左側通行の場合、信号は進行方向の左側に設置される)。
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閉塞信号
閉塞信号は線路を区間に分割し、列車が区間を移動するのに合わせて変化する。閉塞信号は次の区間に列車が存在する場合は次の列車を停止させるために赤を表示する。もし次の区間に列車が存在しない場合、青信号を表示する。区間は、ある信号から次の信号まで、物理的にたどり着けるすべてのタイルを同じ区間と判定する。この際、途中にいくつの分岐があるかは考慮されない。よって、ある列車が進行したとしても衝突する心配が全くない場合でも、その区間に列車が存在する場合は赤信号を表示して列車を進行させない。この点がパス信号と異なる点である。
二方向信号
二方向信号はある線路上に双方向に列車が走行する場合に利用される。最も一般的な使用場所は駅の一方から列車が出入りするような終端駅である。二方向信号は右の図の例のように、次に駅に到着する列車に空いているプラットフォームを利用するように指示する。また、ほかの列車が駅に入線しようとする際に、列車が出発するのを防ぐ動作もする。
列車に2つ以上の進行方向の選択肢があり、いずれも二方向信号が存在する場合、列車は青信号のある方向に向かう。もしすべての信号が赤の場合は、最も簡単な経路を選択し、信号が青になるのを待つ。
二方向信号はオリジナルのTransport Tycoon Deluxe (en)から存在する信号である。
一方向信号
一方向信号は列車の走行を一方向に制限するものである。下の例の場合、一方向信号は列車の運行を反時計回りに制限する。
通常の閉塞信号と比べて一方向信号のほうが有効な場合は主に2通りある。
- RoRo駅は列車が反転せず、また他の列車の駅への入線を防がない駅である。このような駅は列車の出入りをより効率的にする。
- 複線は2編成の列車が反転せずに運行することができる。単線では線路上に列車が存在する場合、衝突する可能性があるためにその列車と反対方向に向かう列車は線路に侵入できない。複線では片方の線路が一方通行になるので、衝突が発生せず、またほかの列車を待つ必要がない。
列車が一方向信号に誤って向かって向かってしまった場合、プレイヤーが設定で信号の設定を無効にしていない限り、その場で即反転する。よって、一方向信号を使用する際はすべての列車が正しい向きで運行していることを確認すること。信号網を構築した路線に初めて列車を走行させる場合、その列車が目的地まで正しくたどり着けるかどうか、最初から最後まで見届けるのは、信号のミスを発見するために良い方法である。
既設の二方向信号を信号ツールでクリックすると一方向信号になる。もう一度クリックすると、一方向のまま信号の向きが変わる。さらにクリックすると、二方向信号に戻る。
列車が一方向信号のある複数の線路にたどり着いた場合、目的地に向かう線路を選択する(つまり、信号が赤と青の場合に青を単純に選ぶのではなく、目的地に向かう信号が赤の場合は青になるまで待つ)。これは二方向信号とは異なる挙動である。
一方向(閉塞)信号は列車の進行方向に向いているが、技術的には、その反対を向いた信号が存在しており、その信号は常に赤を表示し、反対方向からの侵入を防いでいる。この挙動は現実世界の信号システムとは異なっており、より現実に近く効率的なジャンクション制御を行うパス信号も使い方を学ぶ際に勘違いを生じさせてしまう。
一方向信号はオリジナルのTransport Tycoon Deluxe (en)から存在する信号である。
パス信号
"パス信号"はオリジナルのTransport Tycoonの閉塞信号ベースの信号システムを改善するために導入された。パス信号は次の信号までの経路を、その区間に入る前に予約することができる。他の列車がすでに予約済みの区間に侵入しようとした場合に、その経路が重ならない場合は、パス信号はその区間に列車を進行させる。このような機能は閉塞信号やプレ信号の組み合わせでは実現できなかった。これにより洗練された鉄道網を構築することができるようになり、ジャンクション内でのデッドロックをより防ぎやすくなった。
パス信号はより現実的な信号システム(path based signalling (PBS) system)をシミュレーションしようという試みから導入された。その理由は以下のとおりである。
- 現実の信号は基本的に赤信号であり、列車が信号に接近した際にその進行先で他の列車と衝突するおそれがない場合にのみ、一時的に青信号を表示する。現実のジャンクションでは、複数の列車が同時にかつ安全に同じブロックに侵入することができ、これは分岐器が列車がどちらの方向に進行できるかを制限するためである。
- Transport Tycoonでは分岐直後の出口信号(通常の閉塞信号、またはプレ信号網による出口信号)は列車が分岐を出たらすぐに青信号となるが、このような信号システムは現実に存在しない。なぜなら列車が分岐上でスタックした際にデッドロックを発生させるためである。
- 現実では一方通行の路線で一方向を向いている信号は必要ない(進行方向を制限するために"一方通行パス信号"を利用している場合は除く)。列車は信号の後ろからまるで信号などないかのように侵入することができる。ひとつ前の項目で説明した通り、プレ信号は現実に存在しない。これは特に一方向から出入りする駅の目の前に分岐がある場合に重要で、(一方通行ではない)パス信号はこのような駅で駅を向いて設置される。
以下は例である。
パス信号について知っておくべき点が2点ある。
- パス信号は分岐をふさがないで待機できるような場所にのみ設置する。
- パス信号は一方向のみに動作する。反対方向からの列車からは無視されるか、信号のタイプによっては一方通行信号と判断される(以下を参照)。
パス信号(PS) : 信号の反対側から来た列車は進行できる(信号が無いかのように走行する)。一方向(閉塞)信号と混同しないように。 | |
一方通行パス信号(1W PS) : 信号の反対側から来た列車は進行できない。反対向きの列車に向いて永遠に赤信号があるのと同義である。 |
通常はデフォルトのパス信号を利用するのが最も効率的である。経路探索アルゴリズムでは、パス信号を後ろから通過することにはペナルティが発生するからである(ただし、目的地(駅や通過点)がパス信号のすぐ前(パス信号を背面から通過した直後)にある場合はその限りではない)。しかし、状況によっては一方通行パス信号の方が便利な場合もある。
2つの新しい信号は通常の閉塞信号とは異なった挙動を示す。パス信号は通常は赤信号を表示し、列車がパス信号に到着したときに次の場所まで安全に走行できることが確認できたときのみ青信号となる。安全に走行できる、とは定義上は次の信号の前、列車庫、線路の終端である。パス信号の後ろは安全に走行できる場所とは考慮されず、経路はパス信号を通して予約される。
全ての信号の前は安全に待機できる場所と定義されているため、通常は分岐の直後は信号の設置場所に適しておらず、分岐の直前のみ適している。これは分岐の前で列車が待機する方が安全だからである。下の例(例は右側通行である)のように、列車が分岐を完全に通過する前に信号に遭遇して待機することで列車が分岐にかかってしまうのは問題である。これがパス信号が閉塞信号より優れている点である。
悪い例: 矢印で示している信号の配置は悪い例である。分岐内で停車している列車が存在するため、上から来た列車が通過できない。この画像にはもう一つ、配置すべきでない場所に配置されている信号がある。発見できるだろうか? | 良い例: 分岐の後に列車が待つのに十分なスペースがある。このスペースに侵入できない場合、後から来た列車は分岐の前で停車するので分岐をふさがない。これにより、上から来た列車は分岐を無事に通過できる。 |
もう一つ、パス信号でできることの例を挙げる。この構成は2編成の列車が駅を同時に出発し、かつ同じ列車庫に入ろうとする場合にプレ信号よりはるかに上手く動作する。プレ信号では区間を共有できないため、プレ信号でこの挙動を実現することはできない。この例では駅を出発する列車には一方通行パス信号を使用し、列車庫を出発する列車には通常のパス信号を使用している。
上の図では示していないが、通過するタイプの駅の場合、その駅に入る分岐の入り口にパス信号が設置されていれば、駅の入り口に信号は不要である(閉塞信号とプレ信号での構成の場合は、出口信号が効果的だった)。
設定
パス信号に関連する設定が3つある。
1つは予約済み経路のハイライト表示である。この設定は列車が分岐をどのように予約したかを確認できるため、パス信号で構築された分岐のトラブルシューティングに便利である。
他の2つの設定は信号建設ツールの挙動を変えるものである。信号建設ツールを使って新しい信号を設置するときのデフォルトの信号を設定するものと、設置済みの信号に対してCtrlキーを押しながら信号種別を変更する際にどの種別の信号が現れるかを設定する者である。
設定画面に表示されないいくつかの追加のパス信号に関する設定がある。それらがどのようなものでどのように編集するかは別の記事で解説されている。
パス信号を使用した基本的な例
以下はパス信号を使用した基本的な線路のレイアウト例である。発展的な線路レイアウトにも例があるが、初心者にはおすすめできない。
基本のジャンクション
この基本的なジャンクションは同じ経路を走行する列車だけが待つ必要があるため、非常に高効率である。右下から左上に向かう列車は閉塞信号を使った場合は左に向かう列車の通過待ちをしなければならなかった。パス信号の場合は線路を変更しようとしている場合のみ、待つ必要がある。'分岐の場所'を設定するために6つの信号があり、そのうち3つの信号は分岐に侵入するためのパス信号である。
基本の二方向駅
このレイアウトの駅では、列車がどちらの方向から来た場合でもどちらのプラットフォームも利用可能である。パス信号は逆方向から来た列車には影響しないので、安全に駅に停車するためにパス信号の先にプラットフォーム含めて確保できるスペースが存在しない限り駅に侵入できない。このレイアウトは出口信号を駅の前に設置することで実現可能である。
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プレ信号
プレ信号は一組の特殊な機能を持った閉塞信号である。入口信号はその先の区間からの情報だけでなく、ほかのプレ信号(区間から出るための出口信号)の情報に応じても信号が変化する。プレ信号は区間が他の列車にふさがれないようにするために、他の列車の侵入を制限する。双方向に走行する駅や単線のような複数の選択肢があるような経路ではパス信号を使えばほぼ問題ない。
右上の図は閉塞信号で駅への侵入を制御している例である。最低でも1つのプラットフォームが空いている状態では、入線する列車は空いているプラットフォームに誘導されるので、上手く動作する。しかし、図のようにすべてのプラットフォームに列車が停車している場合を考える。すべての駅に入る信号が赤を表示するので、駅に入る列車は最短距離を選択して直進する。ここで右側のプラットフォームに停車している列車が駅にしばらく停車し、左側の列車が先に出発したとする。駅に入ろうとした列車は直進してしまったので、たとえ列車が出発して空いたプラットフォームがあっても信号で停車している。このような状況ではパス信号を使えば問題なく制御できるが、プレ信号を使うことでも解決できる。事実、パス信号が発明されるまではプレ信号で制御するしかなかった。
プレ信号は閉塞信号と基本的な機能は同じだが、その信号の先にあるほかのプレ信号の状態に応じて信号の色を制御する。特に、入口信号はその先に最低でも1つ青の出口信号がある場合のみ列車を通過させる。信号網の設計者、つまりあなたはどれが入口信号でどれが出口信号なのかを考えて設置する必要がある。
入口信号
入口信号はその先にある区間の中のすべての出口信号の状態を監視する。その中に最低でも1つの出口信号が青ならば、入口信号は青を表示する。次の区間のすべての出口信号が赤ならば、入口信号も赤となる。
これは列車が走行できる出口ができるまで、列車の侵入を防いでくれる。列車庫は二方向信号を内蔵している。
入口信号の先の区間に出口信号が配置されていない場合、入口信号は通常の閉塞信号として機能する。これは一方向のみにプレ信号の機能が欲しい場合に両方向プレ信号を利用する際に便利である。
出口信号
出口信号は入口信号に表示させる信号を決定するために使用する。出口信号そのものは通常の閉塞信号として機能する。
まとめると、列車が走行していると最初に入口信号があり、その後最低でも2方向に分岐するジャンクションがある。そのジャンクションを越えると、それぞれの分岐先には出口信号が設置されている。各々の分岐の最初の区間に列車がある場合、新しく列車が分岐に侵入することができない。一つでも分岐先に空きがあれば、列車は分岐に侵入できる。ただし、占有されている側が唯一の目的地に向かう経路だった場合、そちらを選択してしまう。両方の分岐先が目的地に向かっている場合、列車は空いている方の分岐を選択する。
コンボ信号
3つ目のプレ信号はコンボ信号で、入口信号と出口信号の両方として機能する。コンボ信号は1つの信号から多数の出口信号に向かう場合、連鎖的に動作する。1つでも青の出口信号があれば、いずれかのコンボ信号が青となり、それらが続いて最初の入口信号を青にする。これにより、右の図のような巨大な"ツリー状"のプレ信号網を構成することができる。
プレ信号のツリーではコンボ信号は上記の理由により入口信号と出口信号の間に設置される。他の2つのプレ信号(入口信号と出口信号)は信号網の最初と最後にそれぞれ設置される。
プレ信号の設置
プレ信号の設置のためには対応するボタンを信号選択ツールバーから選択する。
過去のバージョンでは最初に閉塞信号が設置され、次にCtrlキーを押しながらクリックすることで異なる信号の種類に交換していた。
- 一方向閉塞信号のように、一方向プレ信号も設置可能である。Ctrlキーを押しながら既設の信号をクリックすると信号の種類が変わり、Ctrlキーを押さずに信号をクリックすると信号の向きが変わるので注意すること。
- 信号を設置する際にはCtrlキーを押さないようにすること。押しながら設置するとセマフォ(腕木式)が設置される。
制限
出口信号を利用する際に重要な点は、出口信号が青信号の場合、その出口信号へ列車がたどり着けるかどうかに関わらず、その区間の最初の入口信号を青にしてしまうことである(右の図のように、下の線路に入った列車は上の線路の出口信号を通過できない)。この現象は複雑なプレ信号網を構築した時により考慮すべき点である。
バグの一つとして"経路が見つけられない"という現象は迷走した列車が出口信号を無視してしまうために発生する。列車が迷走し始めると、各々の分岐でランダムに進行方向を決定するため、出口信号を無視し、プレ信号のある分岐を占有してしまう。そのような場合、パス信号に置き換えると簡単に解決できる。
列車への経路指示
信号は列車が衝突するのを防ぐために利用し、同じ目的地に向かう複数の線路から経路を選択するのを手助けする。もし目的地に向かう列車に特定の経路を走行させたい場合は、信号ではなく通過点を利用する必要がある。
ゲーム中の信号と現実世界の信号
ゲームと同様に現実世界の列車は閉塞(鉄道)信号を使用しており、信号間を区間としているが、多くの場合単線上に限って利用している。信号システムの違いは、現実世界では信号は巨大なコンピューターネットワークに接続されて制御されており、ゲームのように区間ごとの占有状況により独立して制御されていない。
ときどきプレイヤー間で信号システムが現実的かどうかについて激論が交わされるが、違いは明確である。現実世界の信号制御は運行中の列車からの情報に基づき、列車が行き止まりに向かうか間違った経路を選択するのを防ぐために使用されている。ゲームと現実世界の列車の違いの一つは減速である。速度、重量、傾斜にもよるが、52両の客車は完全に停車するのに2km以上必要である。
現実の信号はメイン信号(英語)、遠方信号(英語)、入換信号機(英語)の組み合わせで交通負荷を制御している。国ごとに信号システムは異なり(日本の鉄道信号)、単純に"停止"と"進行"を支持するようなものではない。
現実との違いの例
右の図は現実の信号を使っているゲームの例である。最も早い列車が2番目の列車に追いつきつつあり、2番目の列車は1番目の列車に追いつきつつある。イギリスの信号システムでは2連の黄色信号は列車の運転手に対して2区間先の信号が赤信号であることを教えている。黄色信号が1つの場合は、列車に対して次の区間の信号が"停止"を指示していることを表す。完全に停止する前にこのような3ステップを経ることで、運転手は減速することができ、かつ信号で完全に停止する必要がない。
OpenTTDでは、最速の列車が最も遅い列車に追いついた場合、遅い列車が次の区間内に存在する場合は最速の列車に対して完全停止を強いる。これにより最速の列車は停止状態からの加速が必要となり、またいずれ前の列車に追いついて完全停止する、ということを繰り返す。列車の完全停止と停止状態からの加速は現実ではエネルギーとブレーキの浪費であり、大きなエネルギーのロスである。
またゲームでは遅い列車が側線に対比して速い列車に追い越されるようにプログラミングされておらず、そのような動作をさせるためにはダイヤと通過点を利用して手作業で構築しなければならない。
車両基地(駅や積載場所以外の多数の線路がある場所)の中では、列車は閉塞信号ではなく入換信号を利用する。入換信号は行先の分岐が完全に空いていない場合に通過してよいかの許可を要求する点がゲーム内のパス信号と似ている。入換信号は並行の線路に列車がいる場合に占有されている分岐を使って列車を追い越す場合にも利用される。
入口信号、コンボ信号、出口信号と同じ機能の信号は現実世界には存在しない。信号制御システムは列車のスケジュールに応じて次の区間に侵入してよいかどうか(青信号を表示するかどうか)を決めている。閉塞区間を出た後に入る場所の例としては、入換信号を使用して方向を指示する駅構内などがある。
現実の列車の信号との最も大きな違いは、ゲームでは占有されているかどうかによって制御されるものであり、現実世界のようにより複雑で大量の列車の運行を制御するようになっていないことである。ゲームシステムは列車の運転手との相互作用を考慮していない一方で、現実世界では列車の運転手は制御システムとの連携により複雑な経路を制御している。
Wikipediaには現実の列車の信号についての詳しい解説が多数ある。
以下は英語版Wikipediaへのリンクである。
Dutch railway signaling, designed to be one of the simplest in Europe
North American railroad signals